【転載】シャリーフPML-N党首・熱波・クリスチャン女性准将

(小生が敬愛するパキスタン・ウォッチャーで、日本パキスタン協会会員の中野勝一さんのパキスタン政治関連メモをご本人の許可を得て、一言一句変更なしに転載させていただきます。本稿は2024年6月9日に小生に共有していただきました。)

1.ナワーズ・シャリーフ、PML-N党首に復帰

 去る5月28日、PML-Nはシャリーフ元首相を同党の総裁に選出しました。シャリーフは2017年7月の最高裁判決によって議員失格となり、首相辞任に追い込まれたことは何度か述べました。実はその後の2018年2月には同じく最高裁判決によって、今度はPML-N総裁の地位も追われました。ムシャッラフ軍事政権時代に制定された2002年政党令第5条が、「議員失格となった者は政党の役員に任命されないし、役員を務めることもできない」と定めていたからです(シャリーフ総裁の後釜には実弟のシャハバーズが座り、同党を率いることになりました)。

ところが、今年の1月に最高裁が2018年4月の議員失格の期間を終生とするとの判決を無効とする判決を下したことによって、シャリーフのPML-N総裁への復帰が可能となりました(詳細は日パ協会会報「パーキスターン」2024年5月の拙稿「シャリーフ元首相の四度目の首相ならず」を参照下さい)。

シャリーフの総裁復帰が可能になると、党内には党勢の回復・拡大のためにはシャリーフの総裁復帰を熱望する声が上がり、シャハバーズ首相はPML-N総裁を5月13日辞任し、シャリーフの党首復帰への道を開きました。こうして、冒頭のとおりシャリーフ総裁が実現したわけです。

ところで、5月28日はなんの日か多分ご存じだと思いますが、シャリーフ第2次政権時代の1998年のこの日にパキスタンは核実験を行い、世界で7番目の核保有国となった記念すべき日です。

2.パキスタンに熱波到来

 パキスタンでは5月下旬熱波に襲われ、スィンド州とパンジャーブ州がひどく、5月26日にはスィンド州のモヘンジョダロでは52.2度、同じく同州のジェーコババード(Jacobabad 注)では52度を記録しました。ジェーコババードはパキスタンで最も暑い町だと言われています。

 (注)元々、この町はハーンガル(Khangarh)と呼ばれていたそうですが、、19世紀中頃、新しい町づくりに尽力した、英国人の行政官であったジョン・ジェコブ(John Jacob)の名にちなんで現在の名前に改名されたと手元にある本に書いてありました。今回そのことを初めて知りました。

3.非ムスリム女性の陸軍准将の誕生

 6月2日、ヘレン・メリー・ロバートという女性のクリスチャンが初めて陸軍准将に昇進しました。26年間Army Medical Corpsに勤務している病理学者で軍医総監だそうです。この人事の背景には5月25日、パンジャーブ州のサルゴーダーにおいてコーランを焼いたとしてクリスチャンの男性が群衆にリンチされ(後に死亡)、クリスチャンの家屋が放火や略奪された事件と関係あるのではないかと思います。

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