【寄稿】ウクライナ問題、日本だからこその発信とは?

(英国王立国際問題研究所「チャタムハウス」の客員フェロー、BBT大学准教授の玉木直季さんからの書き下ろし寄稿です。一言一句、編集なしに掲載させていただきます)

「ウクライナ支援『生活に悪影響生じても』7割 読者調査」→その記事必要?

あれから早くも1年になろうとしている。日本の新聞はあまり読まないが、時々チェックするメールでこの記事を目にした。「日本国民はそんなに腹が座っているのか?」と同時に「なんのためにそれを伝える必要があるのか?」と。各個人がどのようなイデオロギーを持ち、何を考えるかは個々の自由だし、大いに自由に感じ、考え、それらを発信する、友人や家族の間で意見を交わし合うのは健全な姿だと感じる。だが、「今、本当に舞台裏で起きていることは何なのか?」を考えさせないように一方向の情報だけを伝えることで「世論(せろん)」を形成していくメディアのやり方には常々疑問を覚えている。

<西洋≠世界>
我が国は、エネルギー自給率約1割、食料自給率約4割。隣国でそのどちらも持っているのがロシア。極東アジアの貧資源で山がちな島(農地が少ない)に国を構えた日本として取り得る道は自ずと見えているのではないか。ロシアに制裁(ロシアからのエネルギー輸入制裁、食糧&肥料輸入制裁)を、と威勢よく言うけれど、これでは、どっちが制裁かけてるのか分からない。
そうは言っても、国際的な秩序やルールがあり、正義とは何かを問うている?という。では国際的ってなんだろう?国際的=西洋的になってはいないだろうか?西洋自体が、ロシア、中国、インド、中東、アフリカ、、、といったそれ以外の世界から孤立し始めている、とは感じないだろうか?

<どちらかが一方的に悪いのか?>
そもそも「最初に手を出したのはロシア、他国に攻め込んだ、ロシアが悪い。」という単純なことなのだろうか?
そもそも、ウクライナ東部紛争を巡る和平合意であるミンスク合意を守らず、ロシア系住民を弾圧したのは誰なのか?歴史の真実として、ハメられて真珠湾攻撃に踏み切ってしまった日本。「先に手を出した、他国に攻め込んだから悪い。」は分かり易いが、物事には因果がある。それを経験した国民として、何か感じるものはないのだろうか?どちらかが一方的に悪かったのか?
とはいえ、私に、良い悪いを判断するだけの知識や経験がある訳ではない。それに、ソ連時代、さらにその前までこの地域の歴史の分母を拡大すると、もうどちらがどうとも言えなくなる。国家間の紛争とは大体そういうものだと思っているし、当該国や地域以外の覇権国の介入が物事をややこしくしているも確かだ。

<あなたがゼレンスキー大統領だったら?>
どうします?西側に武器供与を求めて行脚するのがウクライナ国民のため?地球のため??
(代理戦争だから自分では決められないのかもしれないが)独立国家のトップとしてやるべきは、「国民をこれ以上死なせないこと。」即ち、全力で停戦に踏み切ることなのではないか?大本営発表を鵜呑みにして一番苦しんでいるのはウクライナ国民ではないだろうか。これもまた日本国民は経験レベルで知っている筈だ。何百万人ものウクライナ難民は、ロシアの攻撃から逃れるためであり、また、総動員令による徴兵(18歳〜60歳男子全員対象)から逃れるためだろう。

<でもひょっとして>
メディアは「7割がそうなんだから、これを読んでいるあなたもそうだよね、それで大丈夫だよ、安心して!」と、大勢から外れることを嫌う日本国民に安心感をもたらしてくれているのかもしれない。そう考えると「日本の外で起きているドロドロしたややこしいことは、理解しなくても幸せに生きられる。国内著名人のドロドロだけに興味持っていれば大丈夫だから!」という手近な心地よさを提供してくれているのかもしれない。考えないでも生きられる、ハッピーでなくともアンハッピーでなくいられる、そんな世の中を作ってくれて、ありがとう、とも感じられてくる。

<おわりに>
ただ、それでも、戦争を煽ったり、徹底抗戦を擁護するような記事を出すよりも、ロシア、ウクライナ双方の苦しみを経験している日本国民の間に戦争嫌忌、停戦気分が醸成されるような記事を出すことで、健全な「輿論(よろん)」をつくり、地球のどこかで人間が死なない状況を作ることだって出来る筈だ。どうせプロパガンダなら平和憲法を持つ国らしくやれば良い。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCA151P40V10C23A2000000/

追1)本投稿が記事のクリック数を伸ばし、結果として、業界におけるこの手の記事の投稿を正当化。私こそ、その回し者かも!

追2)マスコミには友人も多く、その殆どが熱血。どこで、それがブロックされてしまうのだろうか、、、

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